持続可能性・バイオフィリックス・天然石の真正性・アースカラーを主体としたセラミックタイルの潮流(2022~2024年)
■2022年チェルサイエ(タイル国際見本市):自然の両面性
イタリアのボローニャで毎年開催される世界最大級のタイル・水廻り製品の展示会チェルサイエ。最新のタイルデザインや技術が集まり、業界のトレンドを牽引しています。
大判セラミックタイルのトレンドは、2022年を境に現在の潮流へと移行しました。コロナ禍から抜け出しつつあったこの年、STAY HOME・行動規制・自粛といった生活に不要不急なものを控え屋内に閉じこもる生活に対して、自然や外部世界との繋がりへの要求が高まりました。その要求は価値観の多様性によって大きく2つのトレンドとしてインテリア空間に現れます。1つは外部から身を守る「シェルター」の役割。健康・衛生・安心・自然体でリラックスした時間への要求は木々・空・海・岩・砂といったアースカラーの色合いや柔らかい質感、丸みや曲線を帯びた形状のインテイリア空間・家具プロダクトとして表現されました。もう一方は、充実した「自己表現としての屋内空間」を創造する活力や明るさに満ちた外向きの装飾表現です。ひまわりの鮮烈な黄色、色鮮やかな果実といった自然界に存在するビビットな原色からより装飾的なゴールドまで。主張する色同士のコントラストの高い組み合わせが特徴として現れました。





【チェルサイエ2022のトレンドを反映したラミナムのコレクション】
■2023年ミラノ・サローネ:自然・材質・形状・光。組み合わせの相互作用
チェルサイエから半年後に開催されたデザイン・家具の国際的見本市ミラノ・サローネでは、外向きな自己表現としての空間・インテリア・家具デザインが大胆な色づかいやパターンとして、またエウロ・ルーチェ(サローネ国際照明見本市)が同時開催されたこともあり「光」によって完成する/変化を見せる煌びやかなデザインが多く見られました。その一方でバイオフィリックスデザイン・柔らかく有機的な形状とアースカラーもトレンドとして引き継がれました。また持続可能性が強く打ち出された年でもありました。




【キーワード】
・サステナビリティ:Salone del Mobile 2023の主要なテーマ。多くのデザイナーやメーカーが、リサイクル素材を使用した製品や、持続可能な生産プロセスで製造された製品を発表しました。
・バイオフィリックデザイン:自然の要素をインテリアデザインに組み込むバイオフィリックデザインも、木材や石などの天然素材の使用や、植物や緑の使用に表れていました。
・柔らかく有機的な形状:家具、照明、アクセサリーのデザインに曲線が取り入れられました。
・大胆な色使いとパターン:多くのデザイナーが目を引く印象的な作品を制作するために使用していました。
・多機能性:多機能家具は、ソファがベッドとして、コーヒーテーブルがデスクとしても使用できるなど、複数の用途に使用できるように設計されています。

【ミラノ・サローネ2023のトレンドを反映したラミナムのコレクション】
■2023年チェルサイエ:3D(立体構造)・トラバーチン・水気と艶
スマートフォンやパソコンの画面では感じることのできない、タイルの質感・温度・立体的な表層。触れて感じることへの要求はタイルの表層の立体的構造として現れました。
2023年はチェルサイエ40周年にあたり、これまでのセラミックタイルの歴史を振り返り、その未来像を示す展示会となりました。トレンドとしてのトラバーチンへの回帰は、伝統的なイタリアの石材へ焦点を当てるとともに、より真正性(本物であること)を追求することに集約されました。

タイルにおいて本物の天然石や大理石を高い真正性を持って再現することが追求されたチェルサイエ2023では、タイル内部にまでデザインを入れ込むことが新しい可能性として示されました。(タイル原料の練り込みの配置により、表面の石脈柄がタイル内部にも連続性を持ってつなげる試み)




【チェルサイエ2024のトレンドを反映したラミナムのコレクション】
■2024年ミラノ・サローネ:持続可能性と責任ある美の追求
ミラノ・サローネで世界に発信されたデザイン・コンセプト。
それらは「自然とのつながり」「持続可能性のための革新的技術」にトレンドとして集約されます。


デザイン&コンセプト
・バイオフィリックスデザイン
自然や自然要素を室内空間と統合するバイオフィリックデザイン。2022年チェルサイエにも見られたトレンドは2024年、壁面・家具や装飾品の表層へのグリーン・アースカラーや自然要素の採用に現れています。美的向上だけではない自然界との深いつながりの感情を呼び起こすデザインは、ウェルビーイングに象徴されるような心身の健康増進にも貢献します。
・有機的な曲線形状
より流動的でダイナミックなデザインへの移行を反映して、有機的な形状がトレンドとして見られます。家具・装飾品は、自然からインスピレーションを受けた流れるような輪郭や不規則な形状を特徴とします。伝統的な幾何学形状からの脱却は、インテリアに自然から生まれる美しさを加えます。
・天然素材
家具・装飾デザインに天然素材を採用することに重点が置かれました。持続可能な素材がコンセプトの中心に据えられ、真正性(モノや主張が「本物」であること)があり暖かみのある色彩や質感が見られます。木材・石材・革・コットンといった天然素材への移行は、環境意識とクラフトマンシップと職人技術へのコミットメントを強調しています。
・マテリアルミックス
異なる素材を組み合わせるマテリアルミックス。木材とガラス、金属とセラミック、石材と木材。異素材同士が主張し過ぎない調和のとれた組み合わせが注目されています。




・持続可能性
私たちは急速に変化する世界に生きており、必要な変化・再構築のための参画への欲求がますます高まっています。市場傾向は、多くの人々が環境問題に非常に敏感であり、自らの価値観を体現するブランドに愛着を感じ、支持することを示しています。企業は消費者に対して自社の理念・価値観・方針・アプローチを示すための透明性・説明責任・持続可能性が求められています。「地球とその未来への問題意識」はあらゆる企業の基本かつ重要な視点となっており、家具・デザイン業界において行われるコミュニケーションは「純粋な美学の追求」から「エコ・サステナビリティ」へと発信されるメッセージが徐々に移行しています。
【ミラノ・サローネ2024のトレンドを反映したラミナムのコレクション】
■2024年チェルサイエ:自然の美しさ・真正性の追求と持続可能性
・自然の美しさの追求:
石、木、テラコッタなど、自然素材の質感をリアルに再現したタイルが数多く登場しました。アースカラーやグリーンなど、自然の色を取り入れたタイルデザインも引き続き注目を集めています。ジャパンディに見られるような、歴史や文化に根差した自然観や幸福感といった個人の内面の価値観にフォーカスした製品群がトレンドとして提案されています。
・大型タイル
自然界の天然石のスケールに近く、空間を広く見せる効果がある大型タイルは、ますます人気が高まっています。
・個性的な装飾
タイル表面の立体表現、リアルな石の質感、ユニークなプリント、異業種とのコレボレーション等による装飾性の高いタイルが増えています。
・サステナビリティ
リサイクル素材や、製造工程で温室効果ガス排出量を削減したタイルといった製造と製品の両面で持続可能性を実現するための技術投資・製品開発が進んでいます。
【チェルサイエ2024のトレンドを反映したラミナムのコレクション】
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