2023.12.16
「人類の未知なる宇宙への挑戦と偉業」の建築的翻訳

コンセプトを代弁する文化的要素としての表層材

―人々の生活様式を分析し、人間の存在を解釈して建築の言語に翻訳することで無機物に命と意味を与え、空間を力のある″場所”に変えるー

2018年ロシアで初めてレッド・ドット・デザイン賞※を受賞した建築家集団VOX architectsのこの理念は、人類史上初の偉業を成し遂げた宇宙飛行士の名を冠したサラトフ・ガガーリン国際空港内のVIPラウンジを形作りました。「秩序と調和のとれた宇宙は、VIPラウンジの建築イメージをデザインするための参照点となりました。」スタジオの創始者である建築家、ボリス・ヴォスコボイニコフがそう説明するように、宇宙のテーマは直接的には「ガガーリンの肖像彫刻」や「宇宙ロケットカプセル」などとして現れ、抽象的には、忍耐・突破・奇跡・超越の動機を表現するむき出しの感情的な建築イメージとして現れます。

ラウンジ内部に垂直に入り込む外光は、無限の宇宙空間に科学技術と人類の剛勇さによって成し遂げられた功績を象徴する光としての意味を与えられ、通り抜けた光は空間全体へ広がります。この光の柱は二層の内部構造に定期的に表出し、フローティング螺旋階段とその中心にあるエレベーター、隣接するバー、非現実的な空間を創り出す照明と合わさりこの場所を構成する重要な要素の1つとなっています。

白、グレーと様々な色合いのスカイブルーとの組合わせから構成される1,044㎡のVIP専用ラウンジ。その床・壁面・階段の表層にはラミナムのイ・ナトゥラリシリーズ、ビアンコ・スタトゥアリオ・ヴェナートが統一的に採用されています。空間にトータル・ルックとしての反復性、連続性を生み出す白色大理石とグレーの石脈は中層圏へ打ち上げられるロケットが発生する水蒸気の雲を想起させ、人類の挑戦と功績を称えるコンセプトを支えています。

【レッド・ドット・デザイン賞】
IDEA design award(アメリカ)、iF design award(ドイツ)と並び世界的権威のあるデザイン賞とされるレッド・ドット・デザイン賞。1995年にドイツ・ノルトライン・ヴエストファーレン・デザインセンターにより設立されたこのデザイン賞は、プロダクトの背景にある革新的で創造的な「コンセプトを重視した高いデザイン品質」が厳密に審査・評価される。