近年ヨーロッパ・キッチンハイブランドが提案している、建築やインテリアの一部としてのキッチン。建築家をクリエイティブディレクターに据えダイニング・リビング・キッチン・収納・ナイトエリア・建具・壁面装飾までを総合的にプロデュースする手法は、空間そのものを統合した1つの商品としてブランド化しています。

壁を取り払い、キッチン・リビング・ダイニング等の複数の機能的エリアを1つの空間として統合する設計手法「オープン・フロア・プラン」古く20世紀初頭のアメリカで著名な建築家フランク・ロイド・ライトが提唱した「プレーリースタイル(草原様式)※」に遡ると言われます。室内の開放感、自然の取り込み、コミュニケーションの促進、働き方やライフステージの変化に対応できる柔軟性の高い大空間といったコロナ禍以降に見られるキーワードは、より流動的で自然と調和した空間を求めるオープン・フロア・プランの考えと共鳴しています。
この新しい潮流は、素材選びの概念そのものを変えつつあります。キッチン材として局所的な機能達成に留まる素材は「周囲との美的連続性と居住空間全体へのシームレスな採用」という新しいデザイン要求を満たせません。オープン・フロア・プランではデザインの共通言語として各空間を緩やかに繋ぐ役割を果たす素材が、洗練された住空間を創り上げる鍵となります。「インテリアとして美しいキッチン」のための素材はキッチン・インテリア・建築に共通した美的価値を提供できるものでなくてはなりません。
※プレーリースタイル(草原様式)
19世紀末までの西洋建築、特にヴィクトリア様式に見られた壁で細かく仕切られた閉鎖的な空間づくりに対し、フランク・ロイド・ライトは、アメリカの広大な草原地帯の水平線を建築に取り入れ、より機能的で、家族の繋がりを重視した新しい住宅のあり方を模索しました。彼は、家を「住むための機械」ではなく、「有機的な生命体」として捉え、自然との調和、そして住まう人の生活を中心とした設計思想を掲げました。
素材のアイデンティティを問う
オープン・フロア・プランの空間では、素材が持つ固有の「アイデンティティ」が、異なる機能的・美的文脈に横断的に適応できる柔軟性を持つことが、空間全体の調和を実現する上で決定的な要素となります。
横断的な用途に求められる3つの特性
1. デザインの多様性….
素材には、ミニマリストからモダン、ナチュラルまで、多様なスタイルに溶け込む柔軟性と選択肢が必要です。ある意味で「キッチンらしさ」を超越し、リビングルームの壁・床、ダイニングテーブル、テレビボード、バスルームなど、様々な空間に違和感なく溶け込む洗練された美的感覚が求められます。例えば、ステンレスは耐久性に優れますが、「キッチン」や「工業的」なイメージが強く、柔らかなリビング空間に馴染ませるには工夫が必要です。一方で、セラミックタイルやクォーツ、木材といった素材は、その多様な質感や仕上げによって、さまざまなスタイルに柔軟に対応し、リビングの壁やダイニングテーブル、バスルームなど、多岐にわたる場所で洗練された美しさを放ちます。
【オープン・フロア・プランへのラミナム採用事例】

Binova / ビノーヴァ
Binovaは、1958年にイタリア中部のペルージャで、若い木工職人であったジョヴァンニとフランチェスコ・ボレッタ兄弟によって創業されました。彼らの木材加工への情熱と技術が、高品質なキッチンメーカーとして世界的に知られるBinovaの礎を築きました。Binovaの最大の特徴は、住空間全体を一つの調和のとれた「ホーム・システム」として考える「Sistema casa Binova(システマ・カーサ・ビノバ)」というコンセプトに集約されています。キッチンキャビネット、ワークトップ、さらには壁や床材まで、すべてが統合的なデザインとして提案され、住宅全体に統一感と洗練された雰囲気をもたらし、機能的でありながらも生活感を感じさせない、美しい居住空間を創り出しています。
2.様々な採用箇所に対応可能な仕様の選択肢….
空間を横断して使用される素材には、特別な要件が求められます。それは、単一の機能に特化するのではなく、複数の役割を美しく、そして確実に果たす能力です。例えばセラミックタイルは採用される箇所によりサイズ・厚み・重量の要件が異なります。キッチン天板には耐衝撃性を高めるための12mm程度の厚み、床面やダイニングテーブルには薄さと強度のバランスの取れた5mm厚、一方で扉装飾部や壁面には薄く・軽量である2.6~3.5mm厚規格が適しています。継ぎ目が好まれないキッチン天板の場合、最大で1枚が1.6×3.2mの超大判サイズが加工され採用されます。「同じデザイン・質感・表面の機能性を持ちながら複数のサイズ・厚み・重量の選択が可能で屋内外のあらゆる場所で採用可能であること」そして、そのデザインの選択肢が多様であること。この要件を満たす素材は多くはありません。
【ラミナムの採用可能範囲と仕様バリエーション】

【オープン・フロア・プランへのラミナム採用事例】

Dibiesse / ディビエッセ
1973年にイタリアのトレヴィーゾ地方で創業されたDibiesse(ディビエッセ)は、「仕立てられた家」という理念を掲げています。顧客の特定の空間、高さ、動きやすさ、整理整頓のニーズに合わせ、細部に至るまでキッチンを「su misura(オーダーメイド)」で提供し、車椅子利用者や体の不自由な人へ配慮した、作業台の高さ調整やモーター駆動式の吊り戸棚、ハンドルやプッシュプル式の扉、視認性のための色のコントラストなど、人間工学を美しく統合されたデザインに落とし込んでいます。キッチンは、リビングやダイニング家具と調和するように設計されており、異なる空間を自然につなぎ、家全体に一体感をもたらしながら家族やゲストが集う、家の中心としての役割を担います。
3. メンテナンスの容易さ….
異なる空間で同じ素材を使うことの最大の利点は、手入れの手間を大幅に削減できることです。キッチン、ダイニング、リビングに統一的に採用された清掃が容易でメンテナンススリーな素材は、日々の生活の質を高め、住空間を常に清潔で美しい状態に保つことができます。
ラミナム磁器質セラミックタイルは食品衛生認証を取得、国土交通省の定める「法定不燃材」です。キッチン・家具・建築表層材として屋内外の住空間のあらゆる場所で高いメンテナンス性を発揮します。

LAMINAM:「空間を横断する」ための現実的な最適解
壁を排し水平方向の広がりを強調することで建築と自然を一体化させる、革命的な思想プレーリースタイル。キッチン、ダイニング、リビングといった機能的な空間を一つの美的な流れとして捉えるこのスタイルは、現代のオープン・フロア・プランの礎となっています。しかしながら、この自由な発想に追従できる素材は多くありません。例えば天然石の重量で吊戸棚を製作できるでしょうか?人工樹脂系キッチン素材はギャラリー収納の装飾扉としての美観・質感を持つでしょうか?一般的な床材はハイエンドなダイニングテーブルの天板材として採用できるでしょうか。壁紙やメラミンシートは屋内外を横断して採用できるでしょうか?
設計者、インテリアデザイナー、家具・キッチンブランドのLAMINAMご採用事例は、「空間を美的に統一する」ための大判セラミックタイル採用の可能性を示してくれています。
【設計者のオープン・フロア・プランへのラミナム採用事例】
【キッチンブランドのオープン・フロア・プランへのラミナム採用事例】









ラミナムジャパン・ショールームで大判タイルのシームレスな空間体験を


