2025.06.26
リフォーム関連
住宅外壁リフォームの建材選び:前編

大切な住まいの外壁リフォーム。オーナー様の5種類の選択肢。

ご自宅の外壁は、住まいの印象を大きく左右する「顔」であると同時に、雨風や紫外線から大切な家を守る、非常に重要な役割を担っています。適切な時期に外壁リフォームを行うことは、建物の健康を保ち、雨漏りや内部の劣化を防ぐ上で欠かせません。また、住まいの寿命を延ばし、将来的な修繕費用を抑え、さらには不動産としての価値を維持・向上させることにもつながります。外壁リフォームの費用は20万円から300万円以上と幅広く、その内容は単なる外観の修繕にとどまらない、住宅の耐久性や長期的な価値に深く関わる大切な投資と考えることができます。

外壁材の選択は、一度行えば数十年単位でその影響が続くため、住宅オーナー様にとって大きな決断となります。目先の初期費用だけでなく、その後のメンテナンスにかかる手間や費用、長期的な耐久性、そして住まいの個性を引き出すデザイン性、さらには将来的な法改正がリフォームに与える影響まで。オーナー様の価値観によってどの外壁材が最適であるかが決まります。※本コラムでは、一般的な他の外壁材との比較によって弊社製品である大判セラミックタイルの外壁材としての特徴・メリット・デメリットをご理解頂く目的で作成しております。

【主要な外壁材の種類と特徴比較】

住宅の外壁リフォームでよく選ばれる外壁材の種類は主に5つです。それぞれの特徴、メリット・デメリット、費用、耐用年数にオーナー様ご自身のライフスタイルやご予算、そして「ここだけは譲れない」というポイントに合わせて、最適な外壁材をお探し下さい。

1.サイディング

サイディングは、工場で生産される板状の外壁材で、日本の住宅外壁の主流です。素材によって特性が大きく異なります。

窯業系サイディング
セメント質と繊維質を主原料とし、デザインやカラーバリエーションが非常に豊富で、短い工期も含めてコストパフォーマンスに優れた日本の住宅で最も普及しているタイプです。(新築戸建てでの採用率70%)耐用年数は20~30年とされています。

【メリット】
・初期費用を抑えやすく、レンガ調や石目調など多様なデザインを選択できるため、幅広い外観イメージに対応できます 。
・防火性に優れています。

【デメリット】
・防水性がないため定期的な表面への防水塗装のメンテナンスや、板と板の継ぎ目(目地)のシーリング補修が不可欠です。
・これらのメンテナンスを怠ると、劣化が進行し、雨水の浸入による変形・反り・ひび割れ・凍害のリスクが高まります 。 

樹脂系サイディング
塩化ビニル樹脂を主原料としたサイディングで、軽量でメンテナンスがしやすいのが特徴です。耐用年数は20~30年とされています。

【メリット】
・軽量さにより建物への重量負担が少なく、色あせやひび割れが起こりにくいため、長期にわたって美観を保ちやすいです。

【デメリット】
・デザインやカラーの選択肢が他のサイディングに比べて限られる傾向があります。
・熱吸収率の高い濃色は特に高温により変形・膨張・収縮を起こす可能性があります。
・主成分の塩化ビニルは火災・燃焼時に塩化水素ガスなどの有害物質を発生する可能性があります。

木質系サイディング
天然木材による風合いを活かしたサイディングで、温かみや重厚感、経年変化による自然な表情も魅力です。耐用年数は5~10年とされています。

【メリット】
・他の素材では表現できない豊かな表情を住宅に与え、個性的な外観を実現できます 。
・熱伝導率が低いため外気の温度変化が室内に伝わりにくく冷暖房効率の向上に貢献します。
・天然資材を使用していることで比較的環境負荷も低い建材と言えます。

【デメリット】
・価格が窯業系・金属系よりも高額
・天然素材のため、防腐・防虫のための頻繁なメンテナンス(塗装や防腐処理など)が不可欠です 。
・日光の紫外線により色褪せ・変色が生じます。耐用年数も他の外壁材に比べて短い傾向にあります。  

金属系サイディング
金属サイディングは柄付け(模様やテクスチャーを施すこと)された金属板に断熱効果のある裏打ち材(補強材)を組み合わせあ外壁材で、非常に軽量です。錆に強く軽量なアルミニウム合金塗装板や耐錆性を高めたガルバリウム鋼板、耐食性を高めた塗装ステンレス鋼板等があります。耐用年数は20~30年とされています。

【メリット】
・他の外壁材よりも軽量で建物への重量負担が少なく、地震時の揺れによる建物への負担軽減という意味で耐震性に優れていると言えます。
・軽量である点は既存の外壁の上から重ね貼りする「カバー工法」に最適で工期短縮によるコストメリットが期待できます。
・水分を吸収しないため、カビや苔が発生しにくく、凍害のリスクが高い寒冷地でも高い適性を有します 。
・断熱材の効果により住宅の空調代等の省エネルギー効果が期待できます。

【デメリット】
・初期費用が窯業系サイディングよりも高め
・金属板であるため固いものや衝撃によるキズ・凹みに弱く、傷から錆びる可能性があります。
・日射の熱による膨張・収縮で「パタパタ」といった音鳴りが発生することがあります。
・美観と寿命延長のために年1-4回の清掃が必要(住宅が海浜地域/工業地域付近の場合多くなります)
・デザインのバリエーションが少ないと感じる方もいます。

2.モルタル

モルタルは、セメントと砂を水で練り混ぜた材料を用いる伝統的な外壁材です。隣家からの延焼を防ぐ高い防火性を持っています。モルタル本体は乾燥によるひび割れが発生しやすく防水性とひび割れの抑制のための表面塗装が施されます。モルタル本体の耐用年数は30年以上、表面塗装の耐用年数は10~20年とされています。

【メリット】
・職人の技術とセンスによって多様な質感や模様を表現できます 。
・継ぎ目のない仕上がりと曲面のある壁にも施工できる点が特徴です。
・洋風・和風・モダンなど幅広いテイストで独特の風合いと高級感を醸し出します 。
・仕上げ塗材を吹付・コテ・くし・刷毛・ローラー等で様々な模様に仕上げることが出来る。
・色のバリエーションも豊富で自然石調の仕上げもある。
・主成分が不燃材であるセメントのため耐火性が高く耐震性にも優れています 。
・厚みがあり密度が高いため外部の騒音を遮断する効果に優れています。

【デメリット】
・施工に時間がかかり人件費が高くなる可能性があります。
・職人の技術により仕上がりが大きく左右します。
・乾燥収縮・建物の揺れ・地盤沈下などの影響を受けやすく表面にひび割れ(クラック)が発生しやすいです。
・クラックは放置すると水が浸入し内部の構造材を腐食させる原因となることがあるため定期的な塗装によるメンテナンスが必要。

3.塗装

塗装は、既存の外壁材の上から塗料を塗布する最も一般的なリフォーム方法です。塗料の種類と施工品質より耐久年数は5年から15年以上とバラつきがあります。

【メリット】
・比較的短期間で施工が完了し、手軽に外壁の色や質感を変更できます 。
・初期費用が他のリフォーム方法に比べて安価で、工期も短く済みます 。
・色の選択肢が豊富で、手軽に住宅のイメージチェンジが可能です。

【デメリット】
・塗料の種類によって耐久年数が大きく異なり、定期的な塗り替えが必須です 。例えば30年の間に2回から5回の塗り替えが必要となり、その都度足場費用なども発生するため、長期的なトータルコストが高くなる可能性があります。
・外壁材自体の大きな損傷(ひび割れや反りなど)が広範囲に及んでいる場合、塗装だけでは根本的な解決にならないことがあります。その場合は、張り替えやカバー工法といった大規模なリフォームが必要になる可能性があり、さらに費用と工期が必要となります。

4.軽量気泡コンクリート(ALC)

軽量気泡コンクリート( ALC:Autoclaved lightweight Concrete)は高温高圧の蒸気で養生された軽量気泡コンクリートのことです。セメント、ケイ石、生石灰、発泡剤のアルミ粉末を主原料とし、内部に無数の気泡を含んでいるのが特徴です。軽量さ・強度・断熱性を併せ持った現代建築に欠かせない建材とされています。主にパネル状にして外壁材として使用されます。吸水性が高く劣化を防止するために表面への防水塗装処理と約10年ごとの再塗装メンテナンスが必須です。

【メリット】
・耐火性・防火性に優れている。主原料が無機物のため、万が一の火災にも有毒ガスや煙を発生することはありません。
・耐久性が高い。ACLパネル内部には鉄筋マット・メタルラス(スチール製の金網)の補強材が組み込まれており耐用年数は50年以上と言われています。
・耐震性が高い。一般的なコンクリートの約1/4の重量のため建物基礎構造への荷重が少なく、耐震性の向上に寄与します。
・断熱性・遮音性が高い。内部にある無数の気泡が熱の伝わりを抑えるため、高い断熱性を発揮します。夏は外の熱を室内に伝えにくく、冬は室内の熱を逃がしにくいため、冷暖房効率が向上し、省エネ効果が期待できます。また、気泡が音を吸収するため、遮音性にも優れています。外部の騒音を軽減し、プライバシーを守ることができます。

【デメリット】
・防水性が低いためメンテナンスが必要。ALCは吸水性が高いため外壁への採用では防水のための塗装が不可欠です。塗装が劣化すると内部に水が浸入、シミ・変色・ひび割れ・膨張・寒冷地では内部の水分の凍結・融解の繰り返しによるALCの劣化が発生します。
・つなぎ目が多い。ALCはパネルを貼り合わせて施工するため、サイディングと同様につなぎ目(目地)が多くなります。このつなぎ目にはシーリング材(コーキング材)を充填して防水性を確保しますが、シーリング材は7~10年程度で劣化します。シーリング材が劣化してひび割れや剥離が発生すると、そこから雨水が浸入するリスクが高まるため、塗装と合わせてシーリングの補修も定期的に行う必要があります。
・初期費用が高い。他の外壁材(窯業系サイディングやモルタルなど)と比較して、ALCパネル本体の価格や施工費用が高くなる傾向があります。1平方メートルあたり6,000円~15,000円程度が相場とされており、サイディングの約2~3倍の費用がかかることもあります。ただし、ALCパネル自体の耐用年数が長いため、長期的な視点で見るとコストパフォーマンスが良い場合もあります。

  

参照【一般社団法人日本窯業外装材協会】 https://www.nyg.gr.jp/toha/index.html : 2025年6月25日アクセス
参照【日本金属サイディング工業会】 https://www.jmsia.jp/ : 2025年6月25日アクセス
参照【国立研究開発法人建築研究所】https://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/data/145/2.pdf :2025年6月25日アクセス
参照【日本建築仕上材工業会】https://www.nsk-web.org/morutaru/:2025年6月25日アクセス
参照【一般社団法人日本外壁塗装協会】https://japan-paint.org/faq/:2025年6月25日アクセス
参照【一般社団法人ALC協会】https://www.alc-a.or.jp/:2025年6月26日アクセス