アンドレア・フェデリーチ・コンサルティングの創設者であり、デザイナーとして多岐にわたる活躍を見せるアンドレア・フェデリーチ氏。
キッチンへの情熱、長年のパートナーシップを築くラミナムとの協業、そして発表されたばかりの革新的な「コンセプト・キッチン」を通して見据える、未来のキッチン像について深く掘り下げます。
偶然の出会いから生まれた、キッチンへの揺るぎない情熱
ミラノ工科大学卒業後、独立系デザイナーとしてキャリアをスタートさせたフェデリーチ氏。2007年から2017年までは、高品質なキッチンを中心に、デザイン性と機能性を両立した家具製品を世界展開するイタリアンスタイルの代表的メーカー・Scavolini(スカヴォリーニ)において、キッチン・バスルーム・リビングルームのコレクションデザイン責任者および製品カタログの制作責任者を務めました。数々の著名なイタリア建築事務所へのコンサルタント業務で培った、国際的な視点を活かし後にアンドレア・フェデリーチ・コンサルティングを設立。製品デザイン、展示会・ショールームのデザイン、グラフィック、そして写真に至るまで、その活動は多岐にわたり、イタリアを代表する家具ブランドとの協業も多数手がけiF Design Award, German Design Award等のデザイン賞を受賞しています。
多様なプロジェクトとパートナーシップの中で、常に中心に据えられてきたのは「キッチン」という空間でした。なぜ彼はこれほどまでにキッチンデザインに情熱を注ぎ続けるのでしょうか。その問いに対し、フェデリーチ氏は次のように語ります。
「キッチンとの出会いは、実は偶然でした。しかし、それはすぐに私の大きな情熱へと変わりました。キッチンデザインは、実に複雑な領域です。住宅ごとに異なるニーズや要件に応じた無限の構成の可能性、そして何百通りもの選択肢が存在する素材と仕上げの組み合わせ。これらを体系的に管理する視点が求められます。この複雑さこそが、私にとって尽きない魅力であり、キッチンキャビネットに関連するあらゆる分野への探求心を掻き立ててきました。まず、内部アクセサリーに始まり、照明、仕上げ、そして様々な構成要素へと関心を広げ、新しいメーカー、新しい素材、新しい挑戦との絶え間ないフィードバックから生まれる熱意に導かれ、この発見のプロセスにますます深く没頭するようになったのです。」
信頼と共感が生む、ラミナムとの揺るぎない絆
ー長年にわたり、数多くのプロジェクトでラミナムを起用してきたフェデリーチ氏。そのパートナーシップは、いつ、どのようなきっかけで始まったのでしょうか。そして、彼が顧客のプロジェクトにラミナムを選び続ける理由とは何なのでしょうか。ー
「ラミナムとのパートナーシップは数年前に遡ります。その始まりには、イタリア営業部長のマッシモ・バローニ氏との間に育まれた、相互の尊敬と信頼という強い絆がありました。彼とは、家具業界に対する戦略的なビジョンと共通のアプローチを常に共有してきたのです。
さらに、ラミナムは、広く知られている製品の優れた意匠性と技術力に加え、プロジェクトの初期コンセプト段階から完成まで、常に寄り添い、継続的なサポートを提供してくれるプロフェッショナルなチームによって、他とは一線を画しています。私たちと顧客に対し、プロモーションや販売段階に至るまで、手厚い支援を提供してくれるのです。」
SICAM 2024で発表。「ラミナム トータルルック」コンセプトキッチンの全貌
SICAM 2024で注目を集めるフェデリーチ氏のデザインによる「ラミナム トータルルック」コンセプトキッチン。厚さわずか2mmのジェミニコレクションを全面的に採用したこの革新的なプロジェクトについて、その詳細を伺いました。
「SICAMで発表するこのプロジェクトの目的は、厚さ2mmという新しいジェミニ素材の、将来的な多様な可能性を、一つの統合されたコンセプトとして提示することです。組み込み家具業界から建築、インテリアデザインに至るまで、あらゆるラミナムユーザーにインスピレーションを与えるような、革新的な製造方法、独創的なディテール、そして最新の製造技術を披露したいと考えました。
このキッチンは、世界最薄の表面材である『twO by Laminam』を使用した初期のプロトタイプの一つです。私はこのイノベーションが、業界に革命をもたらす可能性を秘めていると確信しています。一方では、今日の家具業界において極めて重要な側面である、材料とエネルギーの節約。そしてもう一方では、これほど薄い素材でありながら、これまで不可能だった曲線的な表現など、驚異的な性能を発揮できる点です。実際、『twO by Laminam』のおかげで、半径わずか3メートルという小さな曲率で、凹面や凸面を覆うことが可能になり、セラミックの二次元的な制約を打ち破ることができるのです。


コンセプトキッチンの湾曲した部分には、モジュール式(333x200mm)の装飾要素である『Keyboard』も採用しました。これは、非常に細いストリップを並べることで、デザイン全体にダイナミックな動きを与えることを意図しています。
しかし、私たちの挑戦はそれだけに留まりません。ジェミニコレクションを用いて、カトラリーラック、スパイスオーガナイザー、引き出しの内部など、様々なアクセサリーも開発しました。目指したのは、トータルルックのコンセプトに沿った、完全にコーディネートされたキッチン空間の創造です。」



大胆な色彩が語る、未来への挑戦 – ジェミニ ・アチェロの選択
コンセプトキッチンに採用されたのは、ジェミニコレクションの中でも特に明るく、鮮やかな色である「ジェミニ アチェロ」でした。この大胆な色の選択には、どのような意図が込められているのでしょうか。
「コンセプト、つまり大量生産を前提としないオブジェクトをデザインするということは、必然的に強い実験的な要素を伴います。それは、必ずしも既存のトレンドに沿うのではなく、革新的で最先端のコンテンツを導入するために、あえてトレンドを超越しようと試みるということです。
新しいフォルムを探求するだけでなく、ファッションの世界でよくあるように、色の実験も重要な要素です。その意味で、ジェミニ アチェロは、潜在的な未来のトレンドを先取りする試みと、ラミナムのコンセプトキッチンに、製品の卓越した特性を際立たせる強烈で個性的な存在感を与える必要性との、完璧なバランスを示していると言えるでしょう。」
アンドレア・フェデリーチ氏が描く、未来のキッチン像
長年の経験と革新的な視点を持つフェデリーチ氏にとって、未来のキッチンはどのような姿をしているのでしょうか。
「…必然的に、変容を遂げているでしょう。
私たちは、日々の習慣を根底から揺るがすような、ラディカルな変化の時代を生きています。今日、私たちは多くの活動を同時進行で行い、空間を多様な目的のために多用途に活用しています。未来の住空間は、従来のモデルの硬直性を乗り越え、機能的な特異性を弱め、柔軟で多面的な空間へと進化する必要があるでしょう。私が思い描く未来のキッチンは、住宅の建築と融合し、間仕切りやドアといった構造を取り込み、必要に応じてテクノロジーをカモフラージュすることで、単なる調理空間から、住空間全体の一部としてのインテリアアーキテクチャへと変貌する可能性を秘めているのです。」
デザインへの尽きぬ情熱、その源泉
建築とデザインの世界で長年にわたり活躍してきたフェデリーチ氏。彼の創造性を刺激し続ける原動力とは何なのでしょうか。
「デザインの世界の魅力は、まさに定義された境界がないことにあります。ある日には大量生産の家具をデザインし、次の日には限定版の職人技が光るランプに取り組んでいるかもしれません。木材、鉄、コンクリートといったソリッドな素材を扱ったかと思えば、次の瞬間にはガラスやプラスチックの透明性を探求しているのです。」
アンドレア・フェデリーチ:
出身: 1981年、イタリアのペーザロ生まれ
学歴: 2006年、ミラノ工科大学 (Politecnico di Milano) 工業デザイン修士号取得
デザインの特徴:
エレガントで機能的なデザイン
高度な技術的ノウハウ
日常の空間を特別なものに変えることを目指したデザイン
主なコラボレーション: Arredo3, Effeti Cucine, Falper, Scavolini
受賞歴:
iF Design Award, German Design Award
キャリア:
初期: 2003年より、イタリアの主要な建築事務所と協働。並行して、著名なイタリア家具メーカー(キッチン、リビング、バスルーム、オフィス家具など)向けの独立したデザイナーとしてのキャリアを開始。
Scavoliniとの協力: 2007年から2017年まで、Scavolini(イタリアの主要な家具メーカー)でキッチン、バスルーム、リビングルームのコレクションデザイン責任者および製品カタログの制作責任者を務める。
アンドレア・フェデリーチ・コンサルティング: 現在は、自身の戦略コンサルティング会社であるアンドレア・フェデリーチ・コンサルティングを率いている。同社は、デザイン、建築、写真の分野に特化した高度な資格を持つ専門家チームで構成されている。
国際的な活動: イタリアのトップ家具ブランドとの協力を展開するだけでなく、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、中国に拠点を置く著名な家具会社のクリエイティブディレクターも務めている。