2024.06.23
品質は時代に左右されない価値を持つーロッセラ・コロンバリー

ミラノに拠点を置く”ガレリア・ロッセラ・コロンバリ”は、権威ある国際デザイン ギャラリーの 1 つと考えられています。

ギャラリーのオーナーであるロッセラ・コロンバリは、40年以上にわたり20世紀のイタリアデザインの重要性を世界に発信してきました。オスバルド・ボルサーニ、イコ・パリシ、フランコ・アルビニ、フォンタナ・アルテ。同時代の突出した表現者達による傑作が彼女のギャラリーに展示されています。ギャラリーは、また発信者としてモンテカルロ・ビエンナーレ(1983年)からサロンNY、デザイン・バーゼル、デザイン・マイアミ、PADパリ、PADロンドンまで、重要な国際見本市にも参加してきました。そこでの役割は「文化的な仲介」であり、来場者への作品紹介だけでなく、美術品の真の再文脈化、現代の文脈の中での歴史的作品の再認識を提示することが目的とされています。

オルセー美術館(カルロ・ブガッティ作品提供)ヴィクトリア & アルバート美術館(カルロ・モリーノ作品提供)などの多くの国際美術館と協力関係を持つガレリア・ロッセラ・コロンバリは国際的美術ネットワークの重要な一部でもあります。

LAMINAMは、イタリアンデザインを世界に発信する国際家具見本市、Salone Del Mobile 2023出展を前に80年代から現在に至るまでのイタリアデザイン市場の先駆者と評されるロッセラ・コロンバリにインタビューをオファーしました。
彼女のデザインに対する情熱の原動力・イタリアンデザイン・彼女が自身のギャラリーにLAMINAMセラミックタイルを採用した理由について伺います。

 

■40年にわたる成功のキャリアを経た今でも熱意の炎を燃やし続けることのできる原動力は何ですか?

「好奇心」が私を動かし、現在も私のエネルギーを非常に幅広い仕事に向けることが出来る力になっています。
モノへの興味は建築、出版物、グラフィックへと広がりながら「私の美学に沿った私の世界」のあらゆる側面と接点を持ちます。その世界は偉大なコレクターであり芸術愛好家であった父の影響を受け、私の建築に対する視座も彼の影響のもとに始まり形作られました。
5歳の私はすでに「私の完璧な世界」を想像し創造していました。ベットルームに段ボール製の信じられない程の超高層ビルを建て、家族の毛布や靴下でそれを飾り立てていました。両親は私が10歳になるころには、ジャケットや靴下に穴が開かないようワードローブの鍵を私に見つからないところに隠さなければなりませんでした。
私は常に「何かを変容させる」という行為に惹かれてきました。現実世界より空想世界を好むためか、子供っぽい目つきだと良く言われます。朝、通りを歩くとき、私は周りの建物を眺め、想像力で建物を変容させます。ファサードをどのように修正するか、その幾何学形状をどのように変更するかを考えます。単に全てを批判するような視点ではなく、理解し、練り上げ、改善することが変革に必要なことと私は考えています。

 

■ギャラリーのオーナーとしての典型的な一日はどのように始まりますか?もし典型的な日と言うものがあればですが。

1日は「アイデア」から始まります。動き始めた脳は絵を描き、創造を始めます。たいていは一人で静かに過ごす時、例えばベットの上でアイデアが生まれます。ギャラリーには私の初期のアイデアコンセプトを理解し形にすることを助けてくれる優秀なスタッフが揃っています。私を含むチーム全体が「アイデアのるつぼ」と言えますが、もっと素晴らしい点は私たちにはそのアイデアを実現させる力があることです。
今日も驚きや予期しない出来事に出会いたいと望みながら朝目覚めること。好奇心から生まれる原動力の秘密はそこにあると思います。私はその新しい発見を「欠けたピース」として常に探しています。
例えば数か月前、古くからお付き合いのある顧客が20年前にギャラリーで購入された建築ジュエリー(*1)を持って現れました。80年代の国際的建築家たちによる希少で独創的な作品の中には昨年末に他界された日本人建築家、磯崎新のコレクションがありました。この素晴らしい芸術家とメンディーニ、ソットサス、ボブ・ヴェンチュリ、ハンス・ホラインの生きた80年代への祝福。
TESORI DI ARCHITETTURA 1986(建築の宝物1986)と題されたこれらの建築ジュエリーと現代作品との対話をテーマとした展示会のアイデアはこうして生まれミラノデザインウィーク(*2)期間中にガレリア・ロッセラ・コロンバリで開催されました。

(*1)1980年代にイタリア人デザイナー、クレト・ムナーリが世界の著名建築家にデザインを依頼したジュエリーコレクション。ポストモダン的造形からPoMo Jewelryとも呼ばれる。
(*2)大型展示会場で行われるミラノサローネ国際家具見本市と同時期にミラノ市内各所で開催される小規模展示会、フォーリサローネを合わせた総称。

 

■1972年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された展覧会「Italy:the new domestic landscape※」はイタリアのデザインを正式に神格化させました。イタリアンデザインは今日でも国際的なレベルでのイタリアの魅力を真に構成する要素だと思われますか?

イタリアが戦後、国を再建しなければならなかった時期から、その再建を創造性によって成し遂げた過程を見ていきましょう。戦後から1960年代後半までの「奇跡の経済」と呼ばれる高度経済復興時代は、ジオ・ポンティ、カルロ・モリーノ、フランコ・アルビニにとってその前例のない創造性を発揮する肥沃な土壌になったと言えます。ブルジョア階級のセカンドハウス建設が増加したこの時代、イタリアはインスピレーションの手本となりました。このことは、イタリアンデザインを神聖化したエミリオ・アンバスによりニューヨーク市で開催された展覧会「Italy:the new domestic landscape」によって実証されました。

第二次大戦後のイタリアは世界的なデザインシーンにおける牽引役でした。要因の一つは素材研究とその品質です。当時の建築家は新しいテクスチャーのトレンドを創り出し、業界は単純にそのトレンドに従いました。60年代のジョエ・コロンボはその典型例です。80年代に入り建築家のアレッサンドロ・メンディーニとエットーレ・ソットサスはポストモダニズム運動により合理主義的建築の考え方と袂を分かちました。

残念なことに、この運動の不適切な解釈により、デザインは現在「アートデザイン」と言う紛らわしく正体の分からない様々なものが入る「入れ物」へと変化しています。

※イタリアデザインの発展をPRする目的でイタリア外国貿易省の支援により開催された展覧会。家庭用品約180点により構成されイタリアンデザインが生み出すの新しい生活空間の景色(ランドスケープ)を示した。

 

■ミラノはあなたの故郷であり、その都市を構成する要素や力学については良くご存じです。ロンバルディア州の州都であるミラノはデザインの中心地として国際的に知られ、1961 年にミラノサローネ国際家具見本市が初めて開催された場所でもあります。対面でのコミュニケーションの場が減り、バーチャルネットワークが存在する現在において、ミラノは「創造性を醸成する触媒」としての地位を保ち続けることが出来るでしょうか?

ミラノは人口180万の都市ですが今後も人口増加が見込まれ巨大な都市国家へと成長しています。このことはミラノが企業や働く人に仕事の機会とヨーロッパ最大級の建設プロジェクトを提供することを意味します。私はこれまでのキャリアを通じて「良い品質は常に価値を持つ」ことを実感して来ました。そして顧客を常に魅了してきたもの。それは「美しく、その美しさが時の試練に耐え、老化しない」ことです。大切なことは毅然とした態度で、今日私たちを誤解させ混乱させる狂乱の渦に巻き込まれないようにすることです。何年もの間、市場は誤ったイノベーション神話、つまりあらゆる犠牲を払ってでも変化、革新と新しいトレンドを創り続けなければいけないとする信仰に熱狂してきました。私が企業にアドバイスができるなら「スピードを緩め、自社の品質と安全性を伝えてください」と言うでしょう。
新しさと古さを語るよりも、偉大な建築家が残した作品を振り返り、彼らが何を語りかけているのかを理解できる人々と一緒にそれらの作品に思いを巡らせてみましょう。
未来に関して私は楽観的に感じています。そのため私たちが直面している大きな課題も非常に面白い挑戦と捉えています。私たちは(常に新しさを求める状態から)変化する勇気が求められますが、必ず変化するでしょう。

 

■あなたはガレリア・ロッセラ・コロンバリの床材にLAMINAMの磁器質セラミックタイルを選択しました。採用の決め手となったものは何でしょうか?美しさや機能面で考慮した点はどのようなことでしょうか?

私たちは10年以上LAMINAMをギャラリーの床材として使用して来ました。床に施工された大判のLAMINAMは新しい視点をもたらしてくれましたし、そのサイズが生み出す空間の統一性や破壊されない表層と言うアイデアが気に入りました。
大理石のテーブルや様々な家具が数千のセッティングで床に設置されてきましたが、LAMINAMは常に設置された当時の美しさを保っており、10年以上にわたり一度も張替える必要はありませんでした。
昨今のファッションやインテリアデザインの世界で特に顕著なことですが、”彼ら”は「私たちのニーズは常に変わる」と私たちに信じこませ、十分要求が満たされていないと感じ、新しいものに手を伸ばすことを望んでいます。しかしそれとは反対に「フローリングは経年劣化するだろうか、擦れて傷がつかないだろうか」と言う消費者の永続性への要求は常にあります。
このセラミックタイルを見てください。10年以上ここありギャラリーの全てと調和しています。このグレーの色合いは私のお気に入りのカラーパレットの一部で私は「時代を超越する色合い」と呼んでいます。
私がLAMINAMを選んだ理由を一言で言うと、その洗練性、そして製品の品質と堅牢さにあります。

Rossella Colombari Gallery, Milan – Laminam flooring from the I NATURALI series – Pietra di Savoia Antracite Bocciardata