日本で親しまれている身近なイタリア料理とは一味違う、本場の「マンマ(母親)の味」を届ける家庭料理教室「ピッコロモンド」。2007年に自宅の一室からスタートし、19年もの歴史を重ねてきたサロンが、こだわり尽くした美しいキッチンスタジオとして生まれ変わりました。主宰する、よしだ様(オーナー様)へのインタビューから、情熱の源となるイタリアでの鮮烈な原体験、空間へのこだわり、そして新店舗に込められた真摯な想いを紐解きます。

■すべての始まりはイタリア。日常の中で知った「本物のカルボナーラ」
-ご主人の転勤をきっかけに海外へ渡られたそうですが、現地での暮らしはいかがでしたか?-
よしだ様: 主人の転勤に付いていく形で海外へと渡りました。最初はイタリアに赴任し、その後アメリカへ移り、トータルで12年ほどの海外生活を送りました。
イタリアで日々食事を頂く中で、「日本で親しんできたイタリア料理と何かが違う」ということを、肌で、そして感覚で強く感じました。最初はただ「美味しい、美味しい」と日々の食事を楽しんでいたのですが、日本に帰国することが決まった時、ふと心に湧き上がるものがありました。「ただ主人の海外赴任に付いていった、という思い出だけで終わらせたくない。この素晴らしい本場の味を日本に持ち帰り、多くの方に伝えたい」と。その強い気持ちが、すべての原動力になりました。
その後、再びアメリカで暮らすことになるのですが、その間もイタリア料理への情熱が消えることは決してありませんでした。「日本に帰国したら、イタリア料理専門の教室を開こう」と、心に深く決めていました。
-「日本で食べるものと違う」と感じられたのは、具体的にどのような部分だったのでしょうか。-
よしだ様: 今でこそイタリアで修行を積まれた素晴らしいシェフがたくさんいらっしゃいますが、当時はまだ本場の家庭の味がそれほど広くは知られていませんでした。一番分かりやすいのが「カルボナーラ」です。日本の多くのお店やレシピでは生クリームを使いますが、本場イタリアでは一切使いません。
私の教室では、そうした日本向けのアレンジを極力せず、現地そのままの伝統的な作り方で進めます。もちろん、豚の頬肉の塩漬けである「グアンチャーレ」など、日本では入手が難しい食材もあります。その場合はパンチェッタやベーコンで代用せざるを得ないこともありますが、まずは「本物は本来どう作られているのか」という正しい文化を、しっかりとお伝えすることを何よりも大切にしています。最近では、スーパーでも手に入る欧州食材が増え、ズッキーニなども当たり前に買えるようになりました。生徒の皆さんが自宅で本場の料理を再現しやすい環境になってきたのは嬉しいですね。
■12年の海外生活を経て。家庭の台所で学んだ、温かな「マンマの味」
-イタリアでは、料理学校に通われたのではなく、現地の家庭に飛び込んで学ばれたそうですね。–
よしだ様: そうです。当時はまだ子供も小さかったですし、イタリアでは、いわゆるプロを養成するような専門学校に通ったわけではありません。『12Apostoli※』などのレストランやパン工房に入らせて頂いたこともありますが、どちらかというと、イタリアのマンマ(お母さん)たちの台所に飛び込んで、家庭の味を色々と教えて頂きました。現地で特に親しくなった友人の一人、Verona(ヴェローナ)に暮らすDonatella(ドナテッラ)は、毎年イタリアを訪れると家族のように迎えてくれ、お料理を教えて頂いています。
そのご縁は今も続いて2007年に日本で教室を開いて以降、コロナ禍の期間を除いては毎年イタリアへ通っています。アメリカに住んでいた頃も、わざわざアメリカからイタリアへ通っていたほどです。
イタリア各地のレストランの厨房を見学させて頂くなどプロの現場を体験したこともありますが、私のベースにあるのはやはり「イタリアの豊かな家庭料理の文化」です。
イタリアは日本と同じように南北に長い国ですので、北と南で気候も、育つ食材も、料理も全く異なります。そうした多様で温かみのある家庭の味の魅力を、そのまま日本の皆様にお届けしたいと思っております。
※イタリアの古都ヴェローナの老舗「12 Apostoli」は、2023年にスターシェフのペルベッリーニ氏が継承し、ミシュラン3つ星へと導いた最高峰のガストロノミーです。18世紀に商人が集った居酒屋が起源で、店内には美しいフレスコ画やローマ時代の貴重な遺構が今も残ります。歴史とモダンが融合した空間で、活気溢れるオープンキッチンの臨場感を味わいながら、独創的で洗練された現代風イタリア料理を堪能できます。
■大切なものが詰まった「私の小さな世界」
-教室の「ピッコロモンド」というお名前には、どのような願いが込められているのですか?-
よしだ様: イタリア語で「小さな世界」という意味です。私なりの「小さな世界」を築き、そこに皆様に集まって頂いて、美味しいお料理を囲みながら笑顔や幸せな時間を共有したい。そんな願いを込めて名付けました。今回の新しい店舗(キッチンスタジオ)の屋号も、愛着のあるこの名前をそのまま引き継いでいます。

■偶然の美しい出会いから始まった、新店舗への挑戦
-長年親しまれた自宅サロンから、店舗を構えることになったきっかけを教えてください。-
よしだ様: 本当に不思議な、美しい「ご縁」に導かれた結果です。実は、教室に通ってくださっている生徒さんのお父様が、以前この場所で病院を経営されていたのですが、跡を継ぐ方がいらっしゃらず、建物を解体して新しくビルを建て直すことになりました。
その生徒さんが「新しく建つビルでネイルサロンを開くけれど、サロンにするには少し敷地が広すぎる。どこの誰とも分からない方に貸すくらいなら、先生に、ここで料理教室を開いて欲しい」と、ご家族での話し合いの中で提案してくださり、お声をかけてくださったのです。
-素晴らしいタイミングとご縁ですね。-
よしだ様: 本当に驚きました。ただ、私自身は物件を探していたわけではありませんでしたし、飲食を伴う場を運営する大変さも理解していましたので、最初はやはり迷いました。ですが、これは素晴らしい「ご縁」であり、チャンスだと捉え、一歩踏出して挑戦してみようと決意しました。そこから、道具屋筋の千田様を通じて施工会社のTIS(ティーアイエス)の井上さんを紹介していただき、理想の空間づくりが始まりました。
■美意識を細部に宿した、理想のキッチン空間
–ゼロからの空間づくりにあたり、特にこだわられたのはどのような点ですか?-
よしだ様: 長年、自宅で教室を主宰してきた経験から、作業台の高さやテーブルの広さ、動線には徹底的にこだわりました。
私のレッスンは、生徒さんご自身にも立って作業に加わっていただくスタイルです。実は、自宅サロンでは靴を脱いでいただいていたのでちょうど良い高さだったのですが、新店舗では皆様靴を履いたまま作業されますので、「あ、それでは少し低くなってしまうかしら?」と途中で気づいて調整してもらいました。
特にこだわったのが、この「丸みを帯びた作業台」のエリアです。皆様でひとつの台を囲んで和気あいあいと作業ができ、お料理が出来上がったら、その場でそのまま楽しく召し上がっていただける。作る場所であり、歓談する場所でもある、人が中心のイタリアの食文化そのもののような一体感のある温かな空間を目指しました。
-オリーブグリーンの色合いと木目の調和が、明るく・温かくゲストを迎え入れる空間になっていますね。-
よしだ様: テーマカラーは「オリーブグリーン」にいたしました。イタリアを象徴する植物ですし、私自身が好きな色でもあります。

元々の建物の仕様として、窓枠や一部のドアが木製に決まっていました。店内の他の造作もその木目をベースに美しく調和するよう合わせました。施工の段階では、「本当は床をハツって(削って)フラットにしたかったのですが、構造上の制限でそれができない」という難しい局面もありました。でも、それを逆手にとる形で、井上さんが「ハイカウンター」と「ローカウンター」を組み合わせたデザインを提案してくださり、ラインライトがカッコいいお気に入りの場所になりました。タイルの貼り方も、あえて斜めに貼ってニュアンスを出していただくなど、本当に細かな部分まで私のわがままを叶えていただきました。
■料理を引き立て、日々を支える、妥協なき天板選び
-この広々としたカウンターが素晴らしい存在感ですね。-
よしだ様: こちらのワークトップ(天板)は、イタリア製のセラミック(ラミナム)の12mm厚のものを、贅沢な一枚サイズ(1620×3240mm)で使用しています。
料理教室という性質上、熱いお鍋をそのまま置くことができ、傷がつきにくく、常に衛生的に保てる素材であることが絶対条件でした。このセラミック天板はヨーロッパやアメリカの厳しい衛生認証もクリアしており、水分や調味料が染み込む心配がありません。汚れもさっと拭き取れ、油やワインなどが溢れても気兼ねなく使える、機能面でもまさに理想的な素材です。
実は、以前自宅でこのラミナムの風合いや色合いにとてもよく似た海外のセラミックテーブル※を使っていて、その佇まいを大変気に入っていました。新店舗の施工を担当してくださったTISの井上さんに「こんな天板を使いたい」と相談したところ、「この店舗の素晴らしい雰囲気なら、絶対にこの色が調和する」と、このラミナムの天板を探してきてくださいました。私がセレクトしたお気に入りの黒い椅子とも美しくマッチして、満足いく仕上がりになりました。
※ピッコロ・モンド様にご採用頂いたラミナムの品番OSSIDO NERO(オッシド・ネロ)は1923年創業のイタリアを代表する老舗家具ブランド、カリガリス(Calligaris)の伸長テーブルでご採用頂いています。

■笑顔が吸い寄せられるように集まる、新たな集いの場
-オープンを迎えられて、生徒様方の反応はいかがですか?-
よしだ様: 皆様、一歩足を踏入れた瞬間に「わあ、格好いい!」と、とても新鮮に驚いて喜んでくださいます。「まるで海外のカフェのように素敵」、「落ち着きすぎて帰りたくなくなる」と言ってくださる方もいらっしゃいます。みんなで囲める丸いカウンターも好評です。皆様がこの周りに集まって笑顔になられる。まさに私が理想としていた光景が、ここに実現しました。新しく生まれ変わった「ピッコロモンド」という小さな世界で、これからもたくさんの笑顔と共に、本物のイタリアの家庭の味と豊かな文化を、届けていきたいと思っております。

■教室・スタジオ情報
教室名:イタリア料理教室とパン教室 Piccolo Mondo(ピッコロモンド)
スタジオ所在地:大阪府守口市京本町通り2丁目15-4 Y’sⅢ(地下鉄谷町線守口駅すぐ/京阪本線守口市駅より徒歩約7分)
主なクラス:イタリア料理クラス(家庭料理・おもてなし料理)、手打ちパスタクラス、ブレッドクラス(パン教室)など
公式Instagram:piccolomondo2007
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■オーナー様プロフィール
よしだひろみ(料理・パン教室主宰/イタリア料理研究家)
イタリア在住中に本場のイタリア家庭料理やマンマの愛情豊かな味に深く感銘を受ける。その後、アメリカへ移り住み同様に食について研鑽を積む。イタリアとアメリカで通算12年の生活を経た後、2007年に大阪にて料理教室「Piccolo Mondo」を開講。JSA(旧AISO)認定イタリアオリーブオイルソムリエ、野菜ソムリエ、食品衛生責任者などの資格を保持し、米国の名門 The French Culinary Institute(現International Culinary Center)ではフランス料理2コースの終了証、パン学科ディプロマを取得。現在も毎年イタリアへ渡り、現地の家庭料理や最新の食文化を学びながら、洗練されたレッスンを提供し続けている。