2026.10.06
2026年、セラミックタイルは「印刷」から「表面を設計する」時代へ

― チェルサイエ2026で見えてくる、イタリア・セラミック技術の最新潮流 ―

2026年9月21日から25日まで、イタリア・ボローニャでチェルサイエ2026が開催されます。チェルサイエは、世界中の建築家やデザイナーが集うセラミックタイル・水回り設備の国際見本市です。最先端の大判スラブや質感表現、トレンドカラー、空間提案から、環境技術や施工ソリューションまで、セラミック産業の現在を幅広く見ることができます。

ラミナムも毎年出展するチェルサイエ。その開催に先立ち、セラミックタイルのトレンドや空間提案の方向性を読み解く3つの視点をご紹介致します。チェルサイエで新製品として発表されるセラミックタイル。その表現を支えている製造技術を見れば、セラミックタイルの表現の未来、ミラノサローネで見られるような、建築家・デザイナーの建築・空間・プロダクト表現の未来を垣間見ることができます。

CWRが「技術の背景」を伝え、TECNAが「設備技術の進化」を示し、Cersaieが「製品とデザインとしての答え」を見せる。この3つの視点で「新しい表現」見ることで、2026年のセラミックタイルが、単なる印刷技術ではなく、表面そのものを設計する産業へ変わりつつあることが見えてきます。


① CWR(Ceramic World Review)

イタリアは世界最高峰のセラミック製造設備(SACMI、System Ceramics等)を輩出する技術大国です。その業界団体であるイタリア陶工機械・機器製造業者協会(ACIMAC)の研究部門「MECS(Statistical Studies Centre)」が収集する世界で最も正確な市場データや生産技術統計の一次情報を直接発信しているメディアです。世界のトップ設備メーカーが開発した最先端成形技術(PCRプレスや無枠成形システム)、デジタル印刷、水素窯などの最新イノベーションは、まずこの誌面で技術論文や実証データとして世界初公開されます。技術の「解説記事」ではなく、技術を生み出した当事者による技術報告(一次情報)そのものです。単なるイタリア国内の誌面ではなく、英語・イタリア語をはじめ多言語で世界展開されており、世界中の主要タイルメーカーのCTO(最高技術責任者)やR&D部門、大手設計事務所の仕様策定者が目を通す、国際セラミック産業のグローバル標準誌(業界公式バイブル)です。本記事の技術データおよび製造プロセスの分析は、最新のCWRの技術レポートに基づいています。


② TECNA

セラミック産業をはじめとするサーフェス産業の製造・印刷技術、素材、デジタル化、生産モデル、将来の市場シナリオを横断的に扱う展示会です。セラミック製造ラインに組み込まれる設備や素材を見るだけでなく、産業全体がどこへ向かっているのかを把握する場でもあります。


③ Cersaie

Confindustria Ceramica(イタリア陶磁器工業会)が推進する、世界最大級の建築用セラミックタイルとバスルーム製品の国際見本市です。40年以上にわたり、イタリアの陶磁器産業と世界の建築・デザイン市場をつないできました。CWRで共有される最新情報やTECNA出展メーカーの最新のタイル製造の設備・印刷技術等を用いた新しいタイル表現が発表される場所です。

CWRで紹介される技術や、TECNAで進化する設備・材料が、最終的にどのような製品や空間として現れるのかを見ることができます。


「印刷」から「表面設計」へ

Ceramic World Review 166/2026やTECNA 2026に関する情報を追っていくと、セラミックタイルの技術が大きな転換点に入っていることが分かります。その変化を一言で表すなら、「絵柄をタイルに印刷する技術」から、「表面の形状・質感・光・色・素材感そのものをデジタルで設計する技術」への移行です。

これまでのデジタル印刷は、大理石、木材、コンクリート、天然石などの画像を高精細に再現することが中心でした。

しかし現在は、画像だけではなく、その画像に合わせた凹凸、粒子、光沢、マット、触感までを組み合わせて表現する方向へ進んでいます。

つまり、セラミックタイルは「見るための柄」から、「見る・触る・光を受ける表面」へと進化しようとしています。


1.デジタル3D表面

まず注目したいのが、画像と表面の凹凸をデジタルで連動させる技術です。
その代表例が、SICER社「DIGITAL-STRUCTURE」、Projecta社の「DIGIFIX」「DRYFIX」です。

DIGITAL-STRUCTUREは、画像に合わせて微細なレリーフや質感をつくる技術。
DIGIFIXは、インクだけでなく液体材料そのものをデジタル制御する技術。
DRYFIXは、グリットや粉体をデジタルで配置する技術です。

共通しているのは、「どこに、どの材料を作用させるか」をデジタルでコントロールするという考え方です。


2.表面の下からつくる3D

次に見えてくるのが、表面だけではなく、その下にある構造から立体感をつくる技術です。その代表例が、SICER社「Underskin」、Projecta社「INNOVAFIX」、Esmalglass-Itaca社「Infinity Grits」です。

Underskinは、表面の下に接着剤とグリットによる3D構造をつくる技術。

INNOVAFIXは、グリットを複数段階で保持することで、より立体的な表現につなげます。

Infinity Gritsは、同じグリットでも材料の組み合わせを変えることで、マット、光沢、テクスチャーなど異なる表情を引き出します。

ここでは、「何を印刷するか」から、「材料そのものをどう構造化するか」へ発想が広がっています。


3.光と仕上げを材料から設計する

表面設計の対象は、凹凸だけではありません。Esmalglass-Itaca社の「Diamond Pro」「Diamond Silk」は、光の反射や仕上がりそのものを材料側からつくる技術です。

Diamond Proは、超マットな表面によって光の主張を抑え、素材の深さや質感を引き出します。

Diamond Silkは、従来なら機械的なラッピングや研磨によってつくっていたpolished-matteのような表面効果を、材料技術によって実現するアプローチです。

つまり、「表面をどう加工するか」だけでなく、「材料によってどんな表面をつくるか」という方向へ進んでいます。


4.表面と内部をつなぐ

そして、さらに大きな方向性として注目されるのが、SACMI社の「Deep Digital」です。Deep Digitalは、単純に「深く印刷する」という意味ではありません。

表面のデジタル装飾だけでなく、乾式材料や釉薬、さらにセラミックボディ内部の装飾までをデジタルで連動させ、表面から内部までを一つの素材表現として考える方向性です。

天然石の模様は、表面だけに存在するのではなく内部まで連続しています。

Deep Digitalが示しているのは、まさにそのような**「表面と内部をデジタルでつなぐ」**という新しい発想です。


デジタル化される対象が広がっている

ここまでの技術を整理すると、2026年の変化が見えてきます。

技術領域主な技術主に変えているもの
① デジタル3D表面DIGITAL-STRUCTURE / DIGIFIX / DRYFIX画像・位置・材料
② 表面の下からつくる3DUnderskin / INNOVAFIX / Infinity Grits粒子・構造・質感
③ 光と仕上げDiamond Pro / Diamond Silk光沢・マット・表面仕上げ
④ 表面と内部Deep Digital表面・BODY内部

こうして見ると、デジタル化の対象は、画像 → 材料 → 構造 → 光 → 内部へと広がっています。
従来のデジタル印刷が「どんな柄を印刷するか」を中心としていたのに対し、現在は、

どこに材料を置くのか。
どんな凹凸をつくるのか。
どのように光を反射させるのか。
そして表面と内部をどうつなげるのか。

までが、設計の対象になりつつあります。



そして、各メーカーはチェルサイエで何を見せるのか
。

ミラノサローネに代表されるような新しいデザイン・生活様式の提案や要求。グローバル市場の需要・競争環境。持続可能性への責任。それらの要求や課題にセラミックタイルメーカーは、どう答えるのか。チェルサイエが毎年掲げる「マニュフェスト」はその道しるべとなる大きな方向性を示します。その中で表現や環境対応のための製造機器や設備の新技術は、この道のりを牽引する大きな力となっています。

チェルサイエが2026年のマニフェストで描くのは、完成された未来の風景ではありません。それは、セラミックが建築・インテリア・プロダクトの中でどこまで可能性を広げられるのかを示す、ひとつの出発点です。

「Unexpected Landscapes=予想外の風景」は、本当にどこまで実現されるのか。

その答えは、Cersaie 2026の会場で、各メーカーの製品と空間提案として姿を現します。


ラミナム・ジャパンもチェルサイエ2026へ

今年もチェルサイエ2026へ出展するラミナム。ラミナム・ジャパンのスタッフも会場へ向かいます。会期中の2026年9月21日(月)から25日(金)には、ラミナムの新作コレクション情報はもちろん、本記事でご紹介した「新しい表現技術」を用いてチェルサイエ会場で発表されている「新しい表現」をダイジェストで発信致します。会期終了後には、「チェルサイエ2026」から持ち帰ったラミナムの新作とタイル最新動向をいち早くお届けする限定イベントの開催を予定致しております。詳しい情報は弊社公式インスタグラムにて発信致します。この機会にアカウントフォローをよろしくお願致します。